The Secret Garden Volume 1

Secret Garden Vol.1 – シューゲイザーの隠れた名作
Secret Garden Vol.1 は2008年にGeoff Barrow(Portishead)のレーベル、Invada Recordsからリリースされたシューゲイザーコンピレーションアルバム。シューゲイザーリバイバルの第一期を代表する作品で、エレクトロニカやポストロックを取り入れ、シューゲイザーの枠を広げながらも統一感を持たせた一枚。Myspaceの影響力を受けたこのアルバムは、その後のシューゲイザーシーンの進化を象徴し、今でも高い評価を受け続けている名作だ。
Secret Garden Vol.1誕生の背景
Geoff Barrow(Portishead)のレーベルとして知られている英Invada Recordsより2008年2月にリリースされたコンピレーションアルバム『Secret Garden Vol.1』。当時を知るシューゲイズファンであればお馴染みの作品ではあるが、その後10年で日本ではシューゲイザーのリスナー層とジャンルの認知が激変。まさにタイトル通り、歴史の闇に埋もれてしまった名作となってしまった。
元を辿れば2003年にリリースされたMobile Recordsの『Feedback to the Future』に着想を得たのかも知れないが、『Secret Garden Vol.1』はまさにシューゲイザーリバイバルにより多様化をはじめ、“マイブラの再来”と言う決まり文句だけでは括り切れなくなった“シューゲイズ・シーンのカンブリア爆発”を象徴する1枚であると同時に、その後のコンピレーションブームを作った重要な作品でもある。
また、“楽曲をアップロード出来るSNS”と言う事で当時不動の登録者数を誇っていたMyspaceの影響も大きく、他に競合するSNSも無く、一強かつ純粋な海外インディリスナーの健全なコミュニティが形成されていて小さな海外インディバンドのリリース情報であっても今よりも伝わる速度は今よりも断然速かった。これにより既にエレクトロニカ、ポストロックへ波及し、シューゲイザーの定義も曖昧になり始めていた頃、アーティストそれぞれの表現方法は様々であっても統一されたイメージ(タイトルやアートワーク)でまとめる事によって1つの作品として成立する事を証明した、ある種の発明とも言える作品が『Secret Garden Vol.1』である。
最速でこのコンセプトを実行したのはQuince Recordsで、今でも海外では高い人気を誇る世界初のアジアンシューゲイズコンピ『Half Dreaming』が2008年7月16日にリリースされている。この作品以降、数多くのシューゲイズコンピが例に倣ってリリースされている。また、余談ではあるが、多くの良作コンピレーションがVol.1と謳っておきながらVol.2は永久に出ない。Vol.2を出さないと言う美学も作品の影響なのかも知れない。

『Feedback to the Future』はRide、Slowdive、Lush、Adorable、Revolverなどが名を連ね、今見れば非常に豪華なラインナップ。しかし作品自体はサブタイトルが示す通り、ジャンルとして括ったものであり、『Secret Garden Vol.1』とは根本的に発想が違うと言える。
参加アーティスト
1. Kyte – These Tales Of Our Stay
2. Malory – Take Me Down (Remix)
3. Butterfly Explosion – Carpark
4. Rumskib – Hearts On Fire
5. Orange Yellow Red – All The Hopes
6. The Fauns – The Sun Is Cruising
7. Ulrich Schnauss – Stars (Edit)
8. 93 Million Miles From The Sun – Take Me Away
9. Thought Forms – We Would Be So Happy If…
11. Soundpool – On High
12. Amusement Parks On Fire – Eighty Eight
13. Fleeting Joys – The Good Kind Of Tomorrow
前述したように、この時期はシューゲイザーと言うジャンルはロックバンド、或いはUKロックのサブジャンルから独り歩きを始め、スタイルの多様化が始まった時期。それが色濃く反映されたラインナップになっていて、UKレスター出身のポストロック・バンドKyteや、エレクトロニカ・シューゲイズを代表するUlrich Schnauss、ニューゲイザー・シーンからはAmusement Parks On Fire、ジャーマン・シューゲイズのMaloryなど各方面のツボを押さえており、さらに当時最もlovelessの再現度が高く話題となっていたFleeting Joysなど新世代のシューゲイズを加えた13バンド13曲。中でも注目は発起人でもあるThe Faunsと2020年以降のシューゲイズ・シーンへ繋がるであろうRumskibである。
The Fauns
The FaunsはUKブリストル出身の5人組。ノイジー、ドリーミーでウィスパーボイスと言うシューゲイズのセオリーは踏襲しているが、UKらしからぬ淡々とした直線的な8ビートとポップなメロディは当時引っかけるようなリズミパターンが多かったこのジャンルにあって非常に新鮮であった。後のバンドにも影響を与えたかと言うと疑問ではあるが、解釈の幅を広げる事に成功したバンドである事は間違い無い。
Rumskib
アンデルセンの街として知られるデンマークはオーデンセ出身のRumskib(ラムズキブ)は後にソロでも作品をリリースしているキース・カニシウス(ギター・ヴォーカル)とタイン・ルイーズ(ヴォーカル)の2人組。当時はmy bloody valentine的なサウンド構築の特徴が語られ、本人達もケヴィン・シールズをリスペクトしているのだが、明らかにマイブラよりもCocteau Twinsフォロワーであり、2020年となった現在、ドリームポップ勢の隆盛と共に再評価される事を密かに期待しているバンドの1つ。
2020年に続くSecret Garden Vol.1の種
90年代のオリジナルシューゲイザー勢が不在の中でシーンを盛り上げ、彼らを再結成に導いたバンド達がその波に飲まれて影を潜めているのは嘆かわしい事ではあるが、新旧バンドが混在し、シーンが成熟した2020年代こそ再び彼らが輝く時では無いだろうか。
Soundpoolは解散したが、Kim FieldとJohn Ceparanoの2人はThe Stargazer Liliesを結成。2019年には新作『Occabot』をリリースしている。The Faunsも活動が途絶えているが、ヴォーカルのAlison GarnerのInstagramで久々にThe Faunsが事が投稿されていたので活動再開の兆しかと期待している。また、2018年に『All The New Ends』をリリースし、新作アルバムにも期待が集まるAmusement Parks On Fireや実に10年ぶりのリリースとなったFleeting Joysしかり、2020年以降のシューゲイズシーンの鍵は『Secret Garden Vol.1』にあるかも知れない。
by Takuto Usui
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